高齢ダックスフントの子宮蓄膿症、乳腺癌の併発

※手術写真があります。苦手な方はご注意ください。  犬の子宮蓄膿症は、子宮に細菌が感染し膿が溜まることを言います。陰部から膿が排泄されない場合は敗血症などにより最悪死に到る怖い病気です。避妊手術をしていない、中高齢の雌犬に起こりやすいです。また、乳腺腫瘍も同様に避妊手術をしていない中高齢の雌犬に起こりやすい病気です。犬の乳腺腫瘍は比較的良性が多く、小さなうちに摘出すれば問題ないことも多いです。しかし、サイズが3cm以上だったり多発したりすると悪性度があがり、全身に転移するとやはり死に至る病気です。

 今回15歳の未避妊ダックスちゃんで、子宮蓄膿症と乳腺癌を併発し、手術を行いましたのでご紹介いたします。3ヶ月前にぐったりしてかかりつけ医で診察したら、子宮蓄膿症で危険な状態と言われたというダックスちゃん。貧血もあり手術はできないと言われ、飲み薬だけ処方されたそうです。一旦回復したが、また具合が悪くなりそうなので、手術はできないかとのご相談。身体検査をすると乳腺にも大きなしこりが多数ありました。

お腹のこぶし大のしこり

お腹のこぶし大のしこり

レントゲン撮影、エコー諸々の検査で、やはり子宮蓄膿症であること、細胞診から乳腺癌の疑いはあるが転移はなさそうでした。そこで、ハイリスクではありますが全身麻酔での子宮蓄膿症の手術と乳腺癌の手術を行うことになりました。これらはいずれも外科的に摘出しなければいずれは命を落とします。既に貧血と腎臓病を併発しており、手術は輸血をしながら行う計画としました。

 

全身麻酔を行うところ

全身麻酔を行うところ

バリカンをかけたところ

ボコボコしているのが乳腺腫瘍です

膿でボコボコになった子宮

膿でボコボコになった子宮

まず、お腹を開けて卵巣と子宮を摘出しました。子宮は膿で膨れ部分的に硬く過形成となっておりました。

摘出した乳腺

摘出した乳腺

その後、両側乳腺全摘出と付属リンパ節の摘出を行いました。

縫合を終えたところ

縫合を終えたところ

 摘出した乳腺とリンパ節は病理検査を行いました。結果ははやり乳腺癌でしたが、リンパ節への転移もなく、全て取り切れているだろうとのことでした。今回は平均寿命を超えてからの大手術となりましたが、なんとか乗り切ってくれました。2週間後に抜糸を行いました。

毛が生えてきたところ

冒頭の写真は、手術も終え元気にトリミングに来てくれた時の写真です。乳腺腫瘍も子宮蓄膿症も、生後半年くらいで避妊手術を行なっていれば防ぐことができる病気です。子供を産む計画がない家庭では避妊手術をお勧めします。

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