猫の鼻咽頭中耳ポリープ、耳だれ

膿で汚れた外耳

膿で汚れた外耳

耳が汚れて、しきりに頭を振っているという10歳の猫ちゃん。確かに左耳が耳垢で汚れていました。膿のような液体も貯留していたので、一旦中をきれいにしてから耳鏡という器具で耳の奥を覗くと、赤いできものが確認できました。おそらくこれが耳道を閉塞して、耳だれが起きていると考えられました。

綿棒で外に押したできもの

綿棒で外に押したできもの

血液検査やレントゲ検査では他に異常はみとめられませんでした。通常は耳の奥のできものは頭部のMRI撮影をしたり、耳用の内視鏡で鉗子で摘出し、診断治療します。しかし今回は一部は外から引っ張りだすことができるため、全身麻酔下でできものの組織を出来るだけ牽引切除して、病理検査で診断する組織生検を行う事としました。

麻酔下でできものを鉗子で引っ張りだしています。

麻酔下でできものを鉗子で引っ張りだしています。

全身麻酔下で鉗子を使って、途中でちぎれないように慎重に出来物を引っ張りだしました。するとかなり奥の方から発生している事がわかりました。

摘出したできもの

摘出したできもの

最終的に引きちぎるような形で摘出したので出血しましたが、すぐに止まりました。細長い出来物はホルマリンで固定し、病理検査に出しました。猫ちゃんは麻酔からさめた後も特に耳を気にする様子もなく、耳垂れは収まりました。

病理検査結果は「耳咽頭中耳ポリープ」というものでした。猫にしばしば若い子でも見られ、慢性炎症などから耳管、中耳から発生するポリープです。鼻咽頭と呼ばれる鼻の奥や外耳道側で突出して、しつこい耳垢、耳垂れや鼻水、鼻腔狭窄を起こします。腫瘍ではありませんが、場所的に完全切除が困難で再発を起こす事も多いと言われています。猫は犬に比べお耳のトラブルは多くありませんが、しつこく耳垢が出る場合は、感染症やアレルギーの他にこういったポリープや腫瘍が出来ている可能性もあります。しっかり耳の奥を観察するためにも症状がある場合は早めに病院を受診しましょう。

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