自然に抜けるのを待つ?猫の歯が伸びる、犬歯の挺出(ていしゅつ)

「先生、うちの子、キバがはみ出ているんです」という飼い主さんの訴えはよくあります。これは猫に特有の加齢に伴う変化である犬歯の挺出(ていしゅつ)と呼ばれる現象です。実際は歯の長さは変わらず、歯が押し出されていることになります。はっきりした原因はわかりませんが、吸収病巣と呼ばれる歯が溶ける疾患や歯周病も原因となっていることもあります。

伸びた歯が唇にささったり、噛み合わせが変わり口が完全にとじなくなる

 重度の挺出がある場合は、歯の周りの歯槽骨という顎の骨が腫れて歯槽骨炎という症状をきたしたり、根本がぐらついて痛みを生じます。また、噛み合わせが悪くなり口が閉じなくなったり、歯の先が唇に食い込むこともあります。ここで知っておいてほしいのは、グラグラしていても、意外と歯が抜けないということです。写真の猫ちゃんは16歳。高齢ということで歯が悪いのは飼い主さんも承知しておりましたが、そのままにしていたとのこと。ある日から、ご飯を食べるたびに「ギャー!」となくとのことで来院。診察すると、左下顎の犬歯が特に長く伸びています。グラグラするかを確認するために、チョンと指で触ると・・・「ギャー!!!!」

・・これは痛いですね。高齢でしたがこの歯をそのままにするほうが辛いでしょうということで、麻酔下での抜歯をすることに。術前の検査を行うと腎臓病がありましたが、当日までしっかり脱水を改善しながら手術に挑みました。

 

全体的に歯周病がひどく、レントゲン撮影と合わせて評価してもほとんどの歯を抜歯することになりました。

挺出していた犬歯のレントゲン

横の角度から撮影したところ

抜歯したところ

歯肉を縫合したところ

抜歯後はしばらくは歯がないため違和感があったようですが、グラグラしていた歯もなくなり、食欲が増して体重は増え、体調はよくなりました。

術後の経過

最近は猫ちゃんも長寿化して、加齢に伴う変化として「歯のトラブル」は非常に多いです。歳だからと諦めるよりは積極的に治療してあげたほうが、その後苦痛なく余生を暮らせる様になります。いずれにしろ加齢と共に腎臓病などで麻酔のリスクはあがるだけですので、自己判断で「様子をみる」は禁忌です。歯のトラブルは、最悪抜歯をすれば止めることができるのです。腎臓病やほかの慢性疾患は残念ながら進行性です。ぎりぎり限界からの治療は猫ちゃんにとってもハイリスクです。気になる症状がある飼い主さんは、早めにご検討いただけると幸いです。

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