猫の不正咬合(かみ合わせの問題)、咬合性外傷、化膿性肉芽腫

猫は犬ほど頭の形にバリエーションがなく、咬み合わせの問題は多くありません。それでもごくまれに上の歯の先端が、下の歯茎に当たってしまうことなどがあります。飼い主さんの多くは「硬いものを食べたがらない」「ボロボロ食べ物を落とす」「歯ぎしりをする」「よだれが出る」などから気付くこともありますし、全く気づかれてないこともあります。

一見正常に見えるが・・・

 

いずれにしろ、咬み合わせが悪いままだと、かんでひっぱって遊ぶ、硬いものを食べることなどが十分にできません。また歯茎から感染を起こしたり、将来歯周病が悪化することもあります。そのため、気づいたら早めに治療を行うことが大切です。

今回、生後7ヶ月の雑種猫ちゃんで歯軋りとよだれが出るということでご来院されたケースをご紹介いたします。

生後7ヶ月の猫ちゃん。お口の中を見ると、歯肉の赤みがあり歯肉炎がありました。同時に、下顎の歯肉が腫れていることがわかりました。口を開けたり閉めたりしてよく見ると、上顎の第3前臼歯の尖った部分が、下顎の歯茎に当たっていることがわかりました。

よく見ると・・・

下の歯茎にあたり孔を開けている

上の歯が下の歯茎にあたっています

全身麻酔をかけ、よく噛み合わせを確認すると、左右ともに第三、第四前臼歯の先端が下の歯茎にあたることがわかりました。このような噛み合わせが原因の症状を「咬合性外傷」と呼びます。この部分の歯肉は赤く腫れ、放置すると盛り上がり化膿性肉芽腫という状態になります。さらに放置すると、歯肉の下の歯槽骨(顎の骨)も吸収され、下の臼歯がグラグラになってしまいます。一般的にはこの不正咬合は猫の短頭種に多いとされており、ペルシャ、エキゾチックショートヘア、マンチカン、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、ブリティッシュショートヘアなどの洋猫が該当します。しかしこの子のように通常の日本猫でもみられることはあります。まだ若くなるべく歯を残すために、歯の先を歯髄(歯の神経)が露出しない程度に削り、丸くすることにしました。

ダイヤモンドバーで歯の先を慎重に削ります

歯を削った後はそのままだと感染を起こしますので、コンポジットレジンという被せ物で覆い、凸凹にならないよう平に削って成型します。

レジンを光重合で硬化した後、研磨して滑らかにしている

丸くした後のかみ合わせチェック。下の歯茎に当たらない。

1週間後

この処置は日帰りで行いました。一週間後に確認させてもらうと、当たって穴が開いていた歯茎がだいぶきれいになっていました。今後は被せ物が取れないよう、硬いものは噛ませないなど工夫が必要になりますが、痛みはなくなりました。

猫の不正咬合は飼い主さんだけでは気付けないことがほとんどです。また、症状は永久歯に生え変わる頃から出てきますので、乳歯が抜け代わるタイミングで獣医さんに見てもらうことが肝心です。

 

 

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