犬の歯が欠けた・折れた(破折、抜歯)
ワンちゃんの歯のトラブルといえば歯周病のほかに、「破折」があります。硬いものを噛んだりして歯が欠けてしまうことをいいます。ワンちゃんの様子ですぐに気がついて来院されることもあれば、予防接種などでいらして獣医師が発見することも、また歯科治療時に歯石で隠れていた破折が見つかった、などきっかけは様々です。
硬いものを噛んで歯が欠ける時は、大抵場所が決まっていて、上顎の第四前臼歯です。上顎の一番大きな歯で、下顎の第一後臼歯と噛み合って大きな食べ物を小さく切って飲み込むのに使われます。こういう、「肉を切り裂いて小さくして飲み込む」という動作に使う歯を裂肉歯と言います。裂肉歯ははさみのような役割なので、硬いものを噛むと歯が欠けてしまうのです。
歯が欠けた場合は露髄(歯の神経が外に見えてしまっている)しているかどうか、また年齢や欠けてからの時間経過で治療法が異なります。
・神経が見えてしまっている場合→神経を保存したり除去する歯内治療、もしくは抜歯
・神経が見えていない場合→エナメル質や象牙質の損傷を修復材によって保存する保存修復
歯内治療は数ヶ月おきにレントゲンで治療経過を麻酔下で確認する必要があり、麻酔リスクが上がる高齢ワンちゃんの場合は、歯髄が狭く難易度も高いため抜歯をお勧めすることも多いです。
この時点で最もやってはいけないことは「歯が欠けている、神経が見えている歯をそのままにする」ことです。実際のところ当院には「かかりつけ医に様子を見るよう言われた」と心配されて来院される飼い主さんもおります。神経が見えている歯は噛むたびに痛みが生じるだけでなく、感染を起こし(根尖病変)ほっぺたが腫れてしまうこともあります。様々な理由により歯の温存が不可能な場合は、抜歯が第一選択となります。
抜歯をした場所は、残念ながら噛むことができなくなります。そうならない予防としてはやはり、破折を防ぐために硬いものを噛ませない与えないことに限ります。
当院では下に示す様なグッズをNGとしてご説明いたします。いずれも歯が欠ける原因となったものたちです。
左から骨ガム、ひづめ、鹿の角、ヒマラヤチーズです。歯を強くする、歯石を取るとされ良かれと思って飼い主さんが与えているケースがほとんどですが、歯を欠けさせることが非常に多いです。
テニスボールなどもヨダレとドロで、噛んでいる間に擦れ、歯が磨耗することがあります。
与えられる目安は文房具のハサミで切れるかどうか、指で曲げられるかどうかです。時間をかけておやつを与えたい場合は、下の様なおやつを穴に詰めるタイプのコングもお勧めです。