猫の歯が折れた・欠けた(犬歯の破折・抜髄根管治療)

※個々の症例に対し、お電話のみでのご相談はお受けしておりません。一度診察にいらしてください。

歯が折れる、欠けてしまうことを破折(はせつ)と呼びます。犬では固いものを噛んだときに大きな上の奥歯の第四前臼歯が折れてしまうことが一番多く、猫では主に犬歯(いわゆるキバ)が折れることが多いです。

犬の破折

猫の破折

猫の犬歯が折れる機会は大抵は外傷です。おもちゃで遊んでいて家具にぶつかる、ジャンプしたら落下してぶつけるなど。気づいたら折れていて原因がわからないことも良くあり、野良猫を保護したら、すでに何本も犬歯が折れているということもよく経験します。またマンチカンなどの足が短い猫種は、前足が短いことでジャンプ時に顔をぶつけ、犬歯が折れることも多いようです。

歯が折れた場合、歯の構造のどこまで折れたかにより治療は変わりますが、いわゆる歯の神経が出てしまう(露髄)ほどの破折は痛みが生じます。また、神経から細菌感染を起こすと、歯の根っこに膿瘍を作り顔が腫れることがあります。これらは根尖病変と呼ばれます。ひどい場合は抜歯が必要ですし、いずれにしてもすぐに病院を受診すべきです。抜歯以外の治療としては、歯の神経を抜いて殺菌消毒したのちに樹脂(ガッタパーチャ)を詰める抜髄根管治療があります。

今回、1歳の猫ちゃんの破折で、抜髄根管治療を行いましたのでご紹介いたします。飼い主さんが左上顎犬歯が折れているのに気がついたのは、歯磨きのときでした。いつから折れているのか、原因もわからないとのことでした。

左上の犬歯(きば)が欠けている

まだ若いため神経を抜いて歯を残す抜髄根管治療を希望されましたので、後日全身麻酔下で行うこととなりました。抜髄根管治療では、歯髄を除去し根管を広げ、洗浄しなければなりません。しかし処置中に唾液などが入ってしまい細菌感染を起こすと台無しです。また、洗浄に使う次亜塩素酸ナトリウム(いわゆるハイターにちかい成分)は根管外に触れると非常に危険です。そのため唾液による感染を防ぎ、また洗浄薬から歯肉や口腔内をカバーするためのラバーダム防湿を行いました。

ブルーのシートをかけ、唾液などから根管部を守る

ファイルという金属のやすりのようなもので根管をきれいにし、洗浄を繰り返します。徐々にファイルを太くしていき、根管を形成します。

ファイルという金属のやすりのようなものを挿入している

穴が広がったところ

バイオシーラーという殺菌効果のあるシール材と、ガッタパーチャという樹脂を根管治療内に充填します。最後にコンポジットレジンという被せ物をして終了です。

治療後

レントゲン写真

レントゲン写真

今後は再発防止に気をつけてもらい、1年後、2年後と歯のレントゲンを撮影し、歯髄が感染を起こしたりしていないか確認が必要になります。

 

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