猫の誤食・紐を飲んだ・ヒモ状異物

猫は紐で遊ぶのが好きですが、それらがザラザラな舌にひっかかり、勢いで飲んでしまったりする誤食事故が多いです。比較的若くて健康な猫が突然嘔吐、食欲廃絶などの時は、何か食べてしまっていないか確認、病院へ受診する必要があります。

1歳の猫ちゃん。昨日の夕方から嘔吐し続けてぐったりしていると午前中に来院されました。「タオルのほつれた糸で遊んでいた」ということでしたので、口の中を覗くと・・・。

   

舌の根元に絡まって食い込む糸が確認できました。糸を誤食したことはわかりましたが、問題はこの糸がどこまで進み、どこで引っ掛かっているかです。

糸単独で異物として閉塞を起こすことはあまりありません。しかし舌や胃の中の毛玉などと一部絡まった糸が、そのまま腸の蠕動(中身を移動させる動き)で進んでしまうと、絡まった部分が引っかかったままなので、どんどん腸が引き攣れてしまいます。例えると、巾着袋の紐をぎゅっと絞った状態なので、腸が絞られてアコーディオンのようになってしまいます。そこで怖いのが、その糸が糸ノコギリのように腸を傷つけ、穴を開けてしまうことです。それを腸穿孔と言いますが、糸は広範囲に腸にダメージを与えるためかなり危険です。

今回のように猫ちゃんが協力的で舌の裏まで診察で見せてくれることはマレです。この場合はすぐに診断できましたが、通常はレントゲン撮影や腹部のエコー検査で異物の所見を確認して診断することが多いです。今回も同様に画像検査を行い、上部の消化管におけるひきつれを確認しました。

全身麻酔をかけ、まずは舌に引っかかっている糸を確保します。

お腹を開けて、全体を確認すると、胃からすぐの十二指腸、空腸部分に腸が引き攣れているのが確認できました。幸いなことに腸の穿孔はありませんでした。

 

腸を小さく切開し、そこから糸や絡んだ毛玉などを引っ張り出しました。しかし、一箇所の切開では糸はまだどこかに引っかかっており、引き出すことはできません。

 

胃と小腸の合計3箇所切開し、糸を切断すると引き攣れはなくなり、舌の部分の糸もするすると出すことができました。

最後はきちんと縫合し終了です。

1日絶食したあとは流動食からはじめ、メキメキ元気になったので4日目に退院しました。長毛の子はもともと胃内に毛玉などがあり、糸を飲むと絡まり閉塞を起こしやすいのかもしれません。再発防止のためには、ほつれたタオルはすぐに撤去、遊んでしまいそうなヒモは片付けるなど徹底が必要です。

 

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