毛球により腸閉塞を起こした猫ちゃん

猫ちゃんが毛繕いした際に毛を飲み込み、毛球状となった塊が胃腸に負担になり、嘔吐症状を引き起こすことは経験もあると思います。大抵は下の写真のように、毛球が塊として他の胃液などとともに吐き出されます。

床の吐物。白い毛球と消化したフード混じりの胃液。

頻繁に吐く場合は脱水や胃炎などを起こしますので、毛球対策フードやサプリメントを使用したりします。また他の疾患が隠れていないか詳しく検査する必要もあります。胃の中の毛球はこのように嘔吐で出されるか、腸をつたって便で出されることがほとんどです。しかし、毛球が大きかったり長毛でつながっていたりすると、ひとたび腸に詰まってしまうと命に関わります。いわゆる腸閉塞の状態です。今回、長毛種の猫ちゃんが毛球が腸に詰まり緊急手術を行いましたのでご紹介いたします。

超音波検査で確認された小腸内の異物(黄色矢印)

3歳の猫ちゃん。3日前から何度も吐く、水を飲んでも吐くということで来院されました。来院時、すでに脱水がひどく衰弱した状態でした。血液検査、レントゲン、超音波検査を実施し、超音波検査にて小腸内に異物の可能性が認められました。重症であったため、午後の来院でしたがその夜に緊急開腹手術を行いました。

小腸は全体的に充血し、空腸と呼ばれる部分に2箇所、隣接して塊が触知されました。

二箇所切開して中身を摘出すると、二つとも大きな毛球でした。

一つだけなら腸の運動でなんとか便として排泄されたかもしれませんが、二つ繋がっていたため、閉塞してしまったのでしょう。切開した部分を縫合し、お腹を閉じました。術後は元気も回復し、食欲も出たため3日目から流動食、ウエットフードを与え、嘔吐がないことを確認し退院しました。毛球症は通常は嘔吐、便から排泄されますが、このように閉塞すると腸が壊死したり命に関わります。また、基礎疾患(慢性腸症、腫瘍など)があると起こりやすくなります。基礎疾患の有無を十分確認し、再発防止を心がける必要があります。4-6月は猫ちゃんは換毛期で毛球が溜まりやすくなります。こまめなブラッシングで予防しましょう。

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