頬に穴があいた猫ちゃんの症例

13歳のオスの猫ちゃん。ほっぺたの傷が治らないと来院されました。一ヶ月前他院にて喧嘩傷か?と抗生物質の注射を打ったそうですが改善がなかったそうです。右の頬に穴が開き腫れて出血していました。

丸で囲んだ部分に穴があいている

原因はざっくりと下のように考えられます。

・外傷(ケンカなど)

・腫瘍

・皮膚炎

・歯の問題(歯根膿瘍など)

口の中を確認するとすでに歯が何本も抜けており、歯周病があるだろうことは予想されました。食欲がなく痩せており、各種検査で腎臓病がステージ4とかなり進行していましたので、未治療であった腎臓病のケアから始め、一ヶ月後に全身麻酔下で口のなかを確認しました。その間、頬の穴は開いたままでした。

全身麻酔下での状態。まだ頬の穴から出血する

上顎の状態。ほとんど歯は認められず、犬歯が残る。

上顎犬歯の後ろ側に綿棒をさしこむと・・・

大量のねっとりした膿がでてきました。歯周ポケットはかなり深く鼻腔にもつながっておりました。次に、ほっぺたの穴から金属の棒をゆっくりと刺してみました。

すると、その先端は先ほど膿が出ていた犬歯の後ろではなく、前臼歯のあった場所に出てきました。見た目では歯はありませんでしたが、歯科レントゲンではいくつかの残根が認められました。

 

レントゲンで確認できる歯根を歯肉を切開し数箇所摘出し、重度の歯周炎の下顎犬歯、口腔鼻腔ろうとなっている上顎剣犬歯も抜歯し、手術は修了しました。

腎臓病による慢性的な貧血に加え今回の処置で抜歯による出血が考えられたため輸血を行いながらの大手術となりました。今回の歯周病は、上顎犬歯の歯周病が原因となる口腔鼻腔ろう、その後ろにある前臼歯の残根による根尖膿瘍があり、猫ちゃんはとても辛かったろうと思われます。歯周病は経過をみてしまうとどんどん治療が困難となりますので、とくにシニアの猫ちゃんは早めに受診くださいね。

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