猫の犬歯の破折(歯が折れた)、抜髄

高いところからの落下、交通事故、ケンカなどで犬歯を折ってしまう猫ちゃんは多いです。外傷によって歯が損傷する事を破折といいます。

今回、おもちゃで激しく遊び、歯を折ってしまったという猫ちゃんが来院されましたのでご紹介いたします。まだ二歳という猫ちゃん。左上顎の犬歯の先が折れていました。一週間前に気がついたとのこと。

歯の破折は「露髄を伴っていないもの(単純破折)」「露髄を伴っているもの(複雑性破折)に分類されます。露髄とは歯の中にある神経(歯髄)が一部外界に露出した状態のことで、放置すると感染から歯髄炎を起こし、最終的には歯髄壊死と根尖周囲病巣(歯の根っこがくさる)を生じます。歯を折ってから2日以内であれば歯髄を温存した歯髄覆罩(ふくとう)術を行う事もあります。それ以上経過している場合は、全身麻酔下で歯の根っこの状態を確認したのちに、神経を抜く、抜髄根管治療となります。

これらは「歯を温存する目的」ですが、いずれも全身麻酔下で治療し、一度で終了ではなく、その後半年後、1年と歯科レントゲン(鎮静もしくは全身麻酔下で)を用いた経過観察が必要です。麻酔が負担な場合や高齢の場合は、抜歯という選択肢もあります。※いずれの処置も全身麻酔が必要です。

今回は猫ちゃんが若く、まだ歯を残したいという飼い主さんのご希望もあったので、全身麻酔下で検査、根管治療を計画しました。

折れて歯髄が露出している犬歯

折れて歯髄が露出している犬歯

露髄部分からの出血

露髄部分からの出血

エキスプローラーという器具を使い確認すると、歯髄部分から出血が認められました。またレントゲン撮影でも、歯髄が露出している事がわかりました。幸いなことに歯の根っこ(根尖部)は無事でしたので、抜歯はしなくて良さそうでした。

 

破折のレントゲン

破折のレントゲン

Kファイルという器具などを使って歯髄の除去、根管の内容物の除去、拡大を行います。

Kファイルの挿入

Kファイルの挿入

取れた歯髄(神経)

取れた歯髄(神経)

根尖まで入っているか確認

根尖まで入っているか確認

しっかり根管を拡大清掃した後消毒薬で消毒、乾燥させます。根管をガッタパーチャポイントという樹脂をしっかりつめ、コンポジットレジンを被せ、形を形成研磨して終了です。

レジンをつめたあと

レジンをつめたあと

犬猫の根管治療は、定期的にレントゲンで感染が起きていないか確認する必要があります。また、今後、破折する原因となる環境を作らないようにすることも大切です。

※2022年3月以降、根管治療はすべてラバーダム防湿を実施しております。

2023.04.15加筆追記

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