歯肉口内炎、全顎抜歯から1年半経過して寛解したエイズ陽性猫
※個々の症例に対し、お電話のみでのご相談はお受けしておりません。一度診察にいらしてください。
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歯肉口内炎は喉の奥まで真っ赤になるのが歯周病との違い
猫の歯肉口内炎は尾側口内炎、難治性口内炎とも呼ばれ、喉の奥が腫れ、涎が出て、口が痛くて食事が取れず、命にも関わるとても大変な病気です。原因がウイルス、歯周病菌、免疫関係と複雑に絡み合い特効薬がないため、第一選択は残念ながら抜歯になります。前歯と犬歯を残してあとは抜歯する全臼歯抜歯、全ての歯を抜く全顎抜歯がありますが、どちらも根っこを残すと完治しないためとても大変な処置になります。
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全臼歯抜歯して良好な子
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全顎抜歯して良好な子
痛み止めにステロイドなどを長期に使うと抜歯時の効果が低下すると言われ、もし食欲廃絶などで使わざるをえない場合は、抜歯までの短期使用が望ましいです。
今回は、歯肉口内炎で全顎抜歯後、完治まで1年以上かかったが、現在投薬なしで維持している子をご紹介いたします。
トラちゃん、推定10歳。もともと外猫で保護するために捕獲、去勢手術とウイルス検査を行いました。麻酔下で全身チェックすると口の中が奥まで真っ赤にただれていて、歯肉口内炎と診断しました。また、ウイルス検査ではエイズ陽性でした。
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初日の状態
保護主さんと相談し、後日、全ての歯を抜く全額抜歯を行いました。
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外生活は過酷なため、このように歯が折れていることもしばしば
抜歯後はウエットフードを主体に与えてもらっておりましたが、痛みと涎が続いていることから、免疫抑制剤のシクロスポリンを投与することにしました。免疫抑制剤を使うこと、エイズ陽性であることから定期的に経過観察させてもらいました。
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抜歯後2ヶ月。まだ喉の奥が赤い
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抜歯後3ヶ月
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抜歯後4ヶ月
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抜歯後5ヶ月
トラちゃんは、徐々に室内猫として屋内の環境にも慣れ、ミキサーで細かくしたとろとろご飯を食べて暮らしました。徐々にシクロスポリンの投与間隔をあけてもらい、最終的に5日に1回まで減らし、その後痛がらない段階で投薬終了しました。
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抜歯後1年
投与終了から半年経って口腔内を確認すると、赤みや腫れはなく、口元のヨダレの汚れもありませんでした。体重は保護当初4.2kgから、6.0kgまで増え、ダイエットが必要なくらいになりました。
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1年半後、再発なし。
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2年経過、再発なし。
全身麻酔をかけ、歯を抜くことは猫ちゃんにとっても負担にならないわけではありません。しかし術前の検査をしっかり行い、丁寧な抜歯を行った際は、その後投薬が必要なくなるという可能性があるのです。歯がないのでカリコリと噛んで食べる楽しみはありませんが、そもそも歯が痛い猫ちゃんは噛んで食べるということをしなくなっていることも多いです。一生投薬をして定期通院するか、歯を抜くか。歯を抜いてすぐによくなる子もいれば、今回のように1年以上経って治る子もおりますが、当院では他に完治する治療法がない現在では、一番に抜歯をご提案しております。またエイズ陽性の子の場合は、基本的に一度で全部抜く全顎抜歯を推奨しています。奥歯だけ抜く全臼歯抜歯ですと、それで完治しない場合、残った犬歯と前歯をまた抜かなくてはならず、エイズの子にとって2回の麻酔抜歯処置は負担と考えるからです。もちろん程度にもよりますし、飼い主さんとご相談のうえ行っております。現在当院では幸いなことに抜歯後も内科治療が継続している歯肉口内炎の子は、片手で足りるほどの頭数です。早めの処置、残根させず丁寧に治療する。これを基本に行っております。ぜひご相談ください。