犬のう蝕歯(虫歯)

※個々の症例に対し、お電話のみでのご相談はお受けしておりません。一度診察にいらしてください。

矢印が虫歯部分

犬や猫の歯のトラブルにおいて、う蝕、いわゆる虫歯は非常に少ないです。理由としては、①唾液のpH、②アミラーゼの働き、③歯の形などがあります。

 

①唾液のpH

pHは中性が7、それより高くなるとアルカリ性、低くなると酸性となります。虫歯は口腔内の酸性下で繁殖しやすい特徴があります。人は唾液のpHが6〜7と弱酸性、犬や猫は8〜9とアルカリ性です。そのため、人と比べ犬猫は虫歯になりにくいと考えられます。またアルカリ性の唾液は歯垢と反応し歯石をつくりやすくするため、犬猫は歯石が作られやすく、歯周病になりやすいです。

②アミラーゼの働き

唾液中のアミラーゼは食事中のデンプンを糖に変えます。虫歯菌はその糖を餌にし、酸を作ります。その酸が歯を溶かす原因です。犬猫はアミラーゼが少ないため、虫歯になりにくいです。

③歯の形

虫歯菌は歯のくぼみに繁殖しやすいですが、犬猫の歯は尖っており、虫歯菌が繁殖しにくいです。

以上の点から犬猫は虫歯になりにくいとされておりますが、犬ではまれにみます。実際は歯周病治療などで麻酔をかけて観察して気づくことも多いですが、実際の症例をご紹介いたします。

2歳のビーグルのわんちゃん。歯石が軽度に付着して歯肉が赤く、歯周病治療を希望されました。

軽度の歯肉炎と歯石

 

全身麻酔下で詳しく歯をチェックすると、上顎の奥歯、第一後臼歯の裏側が左右とも黒ずんでいました。

エキスプローラーという細い探子で探ると、中央の凹んだ部分(人では小窩と言われる部位)につっかかる部分がありました。スケーラーでその部分を触れると少し削れ、いわゆる軟化象牙質という組織であることがわかりました。このまま放置するとどんどん歯が溶け、歯髄まで到達すると痛みが生じ、炎症が起きます。

今回は歯髄まで到達しない状態でしたので、虫歯の部分を丁寧に削り取り、コンポジットレジンという被せ物をしました。定期的に観察し、進行している場合は抜歯を選択することもあります。

虫歯を削っている

左右とも被せ物をして終了

もちろん歯周病治療もしてピカピカに

上記で犬猫は虫歯になりにくいと話しましたが、今回のような上顎第一後臼歯はくぼみがあり、犬猫の虫歯の好発部位です。麻酔下でないとなかなか観察しづらい場所でしたので、今回早めに処置できて本当に良かったです。また、虫歯になる傾向として甘いパンなどを日頃おやつでもらっているとか、ふやかしたドライフードなどを食べているなどもありますので、再発予防のためには歯磨きと、食生活の見直しが必要です。

 

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