犬の歯の吸収(TR:Tooth Resorption)

8歳のわんちゃん。実は半年前にかかりつけの動物病院で歯石除去を行なったとのこと。写真の通りすでに歯石がたくさんついています。反対側の歯と比べるとこの通り。

歯石のつき方に左右差がある場合、歯石がついている方の歯をあまり使っていないことが多いです。すなわち、使う(=噛む)と痛い、などの違和感があって使わない→物理的に噛んで歯垢が落ちることが少ない、唾液の分泌が促されない→歯石の付着増加、などが考えられます。歯の痛み以外では口の中にできものがあったり、顎の関節に問題があることも可能性として挙げられます。詳しく調べるには全身麻酔をかけることになるため、たくさん付着した歯石除去など治療を含め、行うこととしました。

全身麻酔をかけ、歯周ポケットの深さを調べるプロービング、歯科レントゲン撮影を全ての歯に行いました。すると左右の歯、ともに顎の骨(歯槽骨)が失われ根分岐部(歯の根っこの枝分かれ部分)まで露出しておりました。

右第4前臼歯、第1第2後臼歯

   

右第1,2,3前臼歯

これは重度の歯周病があること示しており、抜歯の対象となります。歯石の付着が多かった左側については、下図黄色矢印のように歯の根の表面が欠けておりました。

左第2,3前臼歯(第1前臼歯は欠歯)黄色矢印が外部吸収

左第4前臼歯の根分岐部露出病変

ちなみに正常像はこのように歯槽骨が歯の根元までしっかり覆っている状態です。

正常な左第1.2.3前臼歯

正常な左第4前臼歯、第1.2後臼歯

外部吸収とは猫ですと破歯細胞性吸収病巣(はしさいぼうせいきゅうしゅうびょうそう)というのが有名で、歯の根元から歯が吸収され、骨に置換される病態です。犬では人の分類に基づき7つのパターンの外部吸収、内部吸収があるとされております。今回は外部表面吸収と呼ばれるもので、歯周炎などがなければそのまま経過観察でも良かったのですが、このように歯槽骨の喪失により歯の溶けた部分が露出している場合は、痛みを伴うため抜歯が適応と考えられました。

外部吸収は文字通り歯の外側から歯が吸収、別のものに置換していく病態で、原因は外傷などが考えられますが、治療法はありません。また内部吸収は歯髄、いわば歯の内側からの炎症・吸収などの病変です。いずれも歯科レントゲンやCTでの評価が必要となります。これらが歯周病以外にも加齢とともに現れるため、歯科治療を行う際は歯石を取るだけでなく、レントゲンなどを用いて診断をしっかりする必要があります。全身麻酔をかけて行う処置ですから、歯石除去のみでなく、しっかりとした診断治療を行うことが大切です。

 

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