9歳、コーギーの歯が折れた、破折、抜髄根管治療
2024年現在、開業して5年ほど経ちました。歯が折れ神経が出てしまい、いわゆる歯の神経を抜く抜髄根管治療(歯内治療)を行うケースもおかげさまで犬猫ともに多くなりました。ただ、大抵が元気いっぱいの1歳から3歳くらい、飼い主さんも若い子のこれからのことを考え「歯を残したい」というケースが多かったです。今回は9歳と当院では抜髄根管治療としては最年長の子でしたので、ご紹介いたします。
コーギー男の子9歳、骨ガムを食べて歯がかけたと来院。確認すると、右上の第四前臼歯がかけて、神経が見えています(露髄)。
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右上顎の第四前臼歯がかけている。
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赤矢印が露出した歯の神経
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反対側の左上顎は問題なし
歯の神経が露出したままですと、痛みが生じるばかりか、神経が感染を起こしてしまいます。それは将来的に歯の根っこに膿が溜まる根尖病変が起こる可能性があり、いわば爆弾を抱えた状態となります。基本的には痛みを取るために歯の神経を抜く抜髄根管治療か、抜歯という選択肢になります。前者の治療は歯肉に隠れた歯の根っこ部分の治療となるため、経過を確認するためには鎮静ないし全身麻酔下での歯科レントゲン検査が必要です。9歳、10歳、11歳と年齢を重ねつつそういった検査を行うことが可能かどうか術前検査を行い、飼い主さんに確認し、了承を得ましたので抜髄根管治療を行うこととしました。
歯の根っこは第四前臼歯ですと3本あるため、全身麻酔下でその一本一本の神経を取り除き、消毒しやすいように根管を拡大して広げます。
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治療前のレントゲン。歯の根が3本あり、中の黒い筋の部分が歯の神経。
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ざっくりと黒いのが歯の根っこの輪郭。赤いのが歯の神経。
9歳という年齢ですと歯の神経が細くなり石灰化などを生じ、抜髄がしっかりできないことがあります。今回もファイルという細い金属の扱いをかなり慎重に行い処置をしました。
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まずは付着した歯垢歯石を除去する
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歯肉が盛り上がって増殖していたため電気メスで切除、仰向けにして神経に通ずるアクセスホールを開けたところ。
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ラバーダム、クランプを装着
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ファイルと呼ばれる金属のヤスリのような棒で、一本一本の歯の神経を確認して作業します
作業中に唾液の侵入を防ぐため(防湿)、そして体に触れると刺激のある消毒薬を漏れ出さないようにラバーダムというゴムの膜を設置します。そして歯髄を取り除き、根管形成を行います。根管治療形成にはニッケルチタンロータリーファイルという治療器具を用います。手用のファイルより柔軟性があり、薬剤を溜め込むための根管形成に有用です。
しっかり根管を洗浄消毒したのち、何度もレントゲンで確認しながらガッタパーチャと呼ばれる樹脂を殺菌効果の高いシーラー(糊)とともに根管につめます。
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シーラーとガッタパーチャはレントゲンで白くうつる
穴を開けた部分と歯折部分をコンポジットレジンをつめて固めて終了です。実際は盛り上がっていた歯肉過形成部分を電気メスで切除しているのでちょっと見た目の印象が変わりました。
今後定期的に経過観察をしていく予定です。神経を抜いた歯は枯れた木によく例えられます。強度がないため、固いものを食べるとまた欠けてしまうので、飼い主さんにおやつなどは十分吟味して与えてもらいます。基本的にハサミできれないものは与えないようにしましょう。